あの児玉先生のインタビューが Ustream に載りました。私の感想を結論から申しますと「安全厨」の負けで決着。
先日の国会厚生労働委員会での参考人証言は大迫力でした。原発マネーに染まった「御用学者の巣窟」のように悪口を言われていたあの「東大」の教授さまですから。「権威」や「肩書き」がなければ信用できないという人も、この大学の医学部で「助教」でなく「教授」の肩書きがついてれば(少なくとも日本国内では)たぶん文句ないんでしょう。その東大に27カ所もあるというアイソトープセンターを束ねる「長」である児玉教授が、先日は「御用学者」の「安全神話」をぶちこわし、法整備の遅れと政治家の責任を激高して訴えました。時々目線をあげて持ち時間を気にしているのが気の毒でした。今度はインタビュアーと一対一でじっくり時間を気にせず語ってくれてます。
児玉龍彦(東大先端研教授)×津田大介(ジャーナリスト) 録画日時 : 2011/08/05 16:51 JST
http://www.ustream.tv/recorded/16442790/highlight/192344#utm_campaign=fhighlights&utm_source=1&utm_medium=news
すでに国会証言でも内科医としての知見を披露してくれました。ゲノム遺伝子レベルでの発ガンの仕組みについての最先端知識をかみ砕いて語ってくれてました。
今回は、怒ってません。大変穏やかな語り口です。「前提」を切り替えるのが困難という話から始めています。こんな「すごい」量がはじめに放出されてしまったのでは従来の「線量」基準を問題にしていたのではナンセンス。「どこに何があるか判らない」「面」や「空間」で問題にしなきゃいけないのに放射線源は「点」であるかのような基準をもとに議論をいまだにしてるのが駄目だとおっしゃってます。アルファ線を出すプロトラストや、ヨウ素、セシウム、ひとつずつ違うのに、みんな同一のガンマ線量で危険度を測ろうとしてるのが間違いだと。ヨウ素の問題は一番最初に指摘しなきゃいけなかったのにとも。
週刊ポスト記事で、大気中の「放射線量」が核実験盛んだった頃はもっと高かったというのを根拠に「昔のほうが高かったんだから今度も大丈夫」なんてのんきに言ってるのは「トンデモナイ」と言ってます。猿橋女史の努力によって大気中核実験禁止条約が締結されてパタッと実験が止んだから劇的に減らすことができたのに、今回大量放出されてしまった放射性物質のほうも放っておいても減るかのように思わせる罪深さを指摘しています。「閾値理論」を主張し続ける学説の愚かさ、「ホルミシス効果」は慢性炎で「エピゲノム」が書き換えられ「ガン」につながる前段階の症状だから実際危険きわまりないこと等々、従来は両論あると「原子力体制擁護側」が言い続けてきた論点に、先生個人としてはっきり決着つけた上で語ってます。
「科学者」の人も勘違いしてると。「昔」の人は「疫学」と「統計学」が好きでそれが「科学」だと思ってると。コンピュータの時代の研究者は「予測」と「シミュレーション」で勝負。「疫学」とか「統計学」とか時代遅れ。未来の予測をやろうとしているのが最先端の医療。(誰それと名指しこそしてませんが)なぜ21世紀なのに19世紀みたいな議論してるんだと。
「メカニズム」の証明こそ急ぐべきで「疫学」の証明なんて、終わった後でしか出ないんじゃないかなとも。お聞きしてるうちに、原爆による爆心地からの高線量外部被曝しか考慮しないICRPを批判して「公の権威」から嫌われちゃったECRRの内部被曝モデルがかわいそうになっちゃった。原爆症認定訴訟だってこの10年、ECRRモデルが20数連勝してる事実。考えてみればICRPだって英国厚生省によるCERRIEだって「国家統制からの自由」とか「不偏不党」を保証されなきゃ信用できないわけで本来なら「公的機関」であっちゃいけないはず。緑の党傘下のECRRといい、結局どっちもどっち。
しかるに本日に至るまで、大手新聞もNHKも民放も意固地なくらいにこの児玉教授発言を徹底して無視していますね。小佐古教授辞任報道のインパクトの大きさに懲りたんですかね?
今回のインタビューでは、福島の我々に役立つ提言をいろいろしてくれています。行政の縦割りを批判し、従来の「障害防止法」より「上位」の法律を早急に整備すべしと。さらに国がやる大事な仕事は企業の英知を結集するためのプラットフォーム作りだと訴えています。これは個別企業にはできないと。福島に研究センターを大至急設置して「ベスト&ブライテスト」を集めて競争させて、実効ある施策をどんどん実行していかないととも。市役所ごとに「放射能測定110番」を設置して戸別訪問して測定するのも必要と。今のままで行ったら「利権付き公共事業」にしかならない。熱意と実力ある人に集まってほしいと訴えておられます。
児玉先生のお話は、南相馬市での除染活動に関連して朝日新聞に記事も載っていたんですね。
測定と除染を急げ/児玉龍彦東大教授に聞く (リンク先のWeb魚拓というのをクリック)
2011年07月01日
http://megalodon.jp/2011-0703-0143-15/mytown.asahi.com/ibaraki/news.php?k_id=08000001107010005
このようにスケールが大きいビジョンが描けて最先端の医学知識に長けた学者さんを、南相馬市だけに独占させておいていいのでしょうか?この方がチェルノブイリの避難時における家族離散の悲劇を語るのには素直に耳従います。
「福島県は有名になっちゃったぞ」「広島も長崎もかなわない。これからはフクシマ、フクシマ、フクシマ」「国が安全と言ったら安全」「県民は国の指示に従ってここに住み続けデータを提供する義務がある」なんて言ってた先生は嫌。ヨウ素の甲状腺ガン誘発を誰よりも一番良く知ってたくせに「マスクしないで外で駆け回っても大丈夫」なんて子供にも吹聴してた先生は絶対嫌だ。児玉先生のような方にこそ福島県のリスクアドバイザーになっていただけないものか。
こんな考えが甘すぎることは、ぼくみたいなのんきものにもうすうす判ってました。東電だけじゃない。国も県も(将来の)賠償をしぶってる。それでなくともドル崩落で世界同時株安。国庫も企業も大損失だ。日銀介入も投入した「円」を巻き上げられて「米ドル」をさらにつかまされただけだった。津波被害に原発事故の追い打ちで、日本国だってすごく苦しいんだ。
「危険厨」サイトには本当にひどい誹謗中傷も多い(かもしれない)が、「安全厨」サイトだって相手方の人格攻撃が結構多い(ような気がする)。主題をていねいに論じるかわりに論点をすり替え「権威」を笠に相手方の人間性を誹謗してるのが結構ある。そういうのは読んでるこちらまでが馬鹿にされてる感じがするのはなぜだろう。
「直ちに影響はない」というのが「何の影響もない」とイコールでないことだけはもう誰にも否定できないはずだ。嫌だけど、悔しいけど現実を認めなければならないと思う。そんなに激烈なものではないだろう。しかし徐々に徐々にぼくらのまわりでこれまでよりは高頻度でいろいろな健康被害が顕在化してくるのは時間の問題ではないだろうか。そんなときに「県民健康調査のデータに基づくと、今回の原発事故とは「科学的」「疫学的」「統計的」に因果関係は認められません」なんて頼りにしていたお医者さんに冷たく言い放たれたら寂しいな。下は「危険厨」と揶揄されるサイトだけど、論理的に細かな経緯がつまびらかにされて納得できるように感じるのはなぜなんだろう。たとえばこのホールボディーカウンター「検出限界」の問題を、真正面から「誤り」だよと指摘してくれる公式見解はあるのだろうか?スクリーニング段階だから「ゆるく」して測っているんだよという見方もありましょうが・・・
福島県民健康調査、WBCでのセシウム137検出限界570ベクレル、尿検査検出限界13ベクレル
Friday, August 5, 2011
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/08/wbc137.html
児玉先生のような方にリスクアドバイザーになって頂きたいと思う気持ちはおかしいですか?間違ってますか?
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