昨日の夜中にテレビをつけたらNHKで原発労働者消息不明の謎を追求する番組をやっていた。
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/next.html
当然ながらネットでも取りざたされている。
http://togetter.com/li/173924
この件では、初期の作業員中に身分を偽った北朝鮮工作員が多数紛れ込んでいて、汚染水浄化システムに工作し復旧作業の妨害をしていたのではないかなどという憶測さえあった。
どうもこの番組が取材した限りでは全く別の事情があるようだ。ある意味、事故発生以来「安全説」を報道する時のNHKをどこまで信用して良いものか疑わしかったが、このような一種の「スキャンダル」を公共放送に取り上げられると、今度は逆に民報の「煽り」とは違う重みを伴ってズシリと響いてくる。
表向き3次下請け(協力会社と呼ばなければならないのか?)までしか認められない東電による作業員調達が、とっくの昔にうまくゆかなくなっていたというのだ。専門技能工の被曝線量を低減するため、高線量環境下での単純労働には全国から日雇い労働者が集められ、危険な仕事に従事させられているらしい。場合によっては暴力団関係者を含む「手配師」により、偽造身分証明書を貸与して所属企業名を詐称させられて、「借金のカタに」働かされているケースすらあるらしい。被曝線量すら正確には測定されていない可能性さえほのめかす証言には戦慄と嫌悪感を覚えた。ことは過去の話ではなく、現在も進行中。先の改善の見込みも薄いようだ。
以前知人に聞いた話では、危険な作業を「協力企業」に完全丸投げしていたのは過去の話で、少なくとも事故後は東電「正社員」が率先してリスクを取って命がけの作業をしてくれているはずだったのだが。私たちだって作業員に被曝リスクを肩代わりさせて日々の安穏を担保してもらっている事実に変わりはないのだが。
もしこのNHK番組の示唆するところが真相だとすると、この業界を巡る「労働問題」あるいは「差別問題」は、「原発ジプシー」に描かれた世界から、まったく進歩していないことになる。
堀江 邦夫「原発ジプシー」 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録 [単行本]
http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%B8%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%BC-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88-%E2%80%95%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E4%B8%8B%E8%AB%8B%E3%81%91%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2-%E5%A0%80%E6%B1%9F-%E9%82%A6%E5%A4%AB/dp/4768456596/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1313252052&sr=1-1
調査報告/原子力発電所における秘密 日本の原発奴隷
http://www.jca.apc.org/mihama/rosai/elmundo030608.htm
しかもかく言う自分だって、したり顔で国や原子力産業と東電を糾弾しているつもりが、結局のところ我が身の安全も「匿名」の誰かの「犠牲」の上に成り立っているといういわば「原罪」を反芻せざるを得ないわけで、苦々しいことこの上ない。せめて中間搾取が最小で現場でリスクを負う人の対価が最大となりますように、なんて祈ってみたところで、なんの役にも立たないことは明白。人道主義的なきれい事を口にしてみても「弱肉強食」のシステムを結局は是認しているということなのか。