2011年9月8日木曜日

福島市で国際専門家会議: チェルノブイリ被害の実情はどうだったのか?

ICRPとECRRの基準が違いすぎることに最初から当惑していた。

前者が原子力推進派で、国際機関や各国政府、原子力産業(およびマスコミを含めた関連全産業)が強く後押しするいわゆる「公式」の団体ということになる。ただ「公式」なら信用できるかというと怪しくて、本音のところではできる限り「原子力発電は安全、安心」と言いくるめたい、都合の悪いデータは黙殺し、できれば「無いものとしたい」という姿勢で一貫している。内部被曝についてはほとんど理論的モデルを示さず、健康影響も微々たるものとしてすませてきた。カネと権力にものを言わせて、圧倒的な権威ある陣容を整えて悠然と構えている。一部の批判もどこ吹く風。ほとぼりが冷めたらこの上なくもうかるビジネスとして原発売り込みに再び全面協力する気迫十分。

一方後者は反原発活動市民団体のアジテーションそのもののような勢いで、ヒステリックなまでに意気軒昂。そのぶん安定感に欠け勇み足も多い。か弱き市民の側に立ち、横暴な国家権力に立ち向かう正義の騎士を自認しているようなところがある。50年以上も「無いものとされてきた」広島原爆の放射性降下物による健康被害に苦しむ人々の側に立ち、内部被曝の仕組みについて具体的なモデルを示して、原爆症認定集団訴訟で連戦連勝を勝ち取っていながら、なおマユツバもの、キワモノ的存在と権力側から揶揄され、一般の評価を下げている。世界を動かす巨大権力を向こうに回して、世界そのものといってもよいほどの巨大資本にたてつこうというのだから、ふつうの気合いでは勝負にならない点には同情するが。

双方「科学的」な基準のはずなのだけど、それぞれの思惑が透けて見えすぎて、とても冷静には見比べられない。我々民衆に向かって「放射能の炎を吹く竜」が本物なのか、それともドン・キホーテが対峙しているのは「ただの風車」にすぎないのか、本当はどっちなのだろう。

原発推進派で笹川財団(日本財団)のお金でチェルノブイリの健康調査に協力してきた先生方がフクシマでリスクアドバイザーになったことはどう考えればいいのだろうと思ってた。この先生が「安全、安心」と県内を精力的に講演行脚し、のんきな声が4月当初から連日ラジオで繰り返し流れるのを聞かされながら、私などはかえって「不安」にさせられたものだが、知人に聞くとおかげで「安心」できたという声も確かにあるようだ。

「放射線と健康リスク-世界の英知を結集して福島を考える」と題して、来る11日、12日に福島市で国際専門家会議が開催される。

http://www.nippon-foundation.or.jp/org/news/fukushima-sympo.html

これに対して、チェルノブイリの被害を過小評価してきた大御所たちが、フクシマでもまた同工異曲を奏で始めていると鋭く批判している人がいる。かなり悪意に満ちた意地悪な見方だ。しかし事故直後のいわきに高濃度のヨウ素を含む放射性プルームが飛来していたことは、今頃になって公式に認められた。チェルノブイリでの調査結果として、子供に甲状腺ガンが頻発すること「だけ」は公式認定し、誰よりも多くその症例を目にしてきたはずのご本人が、いわきでも郡山でも福島でも飯舘でも「マスクをしないで外で遊んでいて大丈夫」と語っていた精神構造がいまだに理解できない。

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